“BtoBtoC”と“BtoCinB”(BtoE)

 数年前から、IT系の機器やコモディティ、あるいはソフトウェア等の業界においては、従来のBtoBではなく、“BtoBtoC”で説明されるようになってきた。BtoBtoCは、売り手側である、自社の顧客企業のお客様(一般消費者をさす場合が多い)のニーズを視野に入れたビジネスである。会計や各種管理業務などのバックオフィス系のIT化が一段落した現在、顧客企業とのWIN-WINの関係を積極的に構築することを目的としたビジネス形態ともいえる。
 日本では、NTTドコモの戦略として3年ほど前にこの言葉が使われていた。
 
 企業向けのIT機器、ソフトウェア、もしくはサービスは、このBtoBtoCでの事業戦略モデルが欠かせなくなってきていると感じている。特に中小企業においては、今年から来年にかけてIT投資意欲が大企業を上回る予測も出ているものの、昨今の為替対策や景況感、経営環境の不安定さなどより、以前よりも活発なIT投資を望むのは時期尚早かもしれない。その中であってもIT投資対象となることがあるとすれば、おそらくこのBtoBtoCが実現できるITに投資がシフトされていく、つまりそういう製品でないともはや厳しい。
 
 先日、とある会合で外資クラウドベンダーの話を聞き、また直接に外資系PCメーカーの戦略を聞いても、彼らが今注目しているのは、日本の中小企業向け事業だそうである。例えば、Google Apps等は、パブリッククラウド型で中小企業の社員向けのメールやプレゼンツール、スケジュール等のグループウェア機能も提供している。こうしたモデルは、時折、“BtoE”と言われたりもする。
 
 このBtoEと言うワードには若干の違和感があり、個人的には“BtoCinB”(自社の顧客企業に勤めるビジネスパーソンの意)という言い方のほうがしっくりくるかもしれないと考えている。パブリッククラウドであるならば、確かに顧客企業の社内のITポリシー次第だが、顧客企業に勤める社員が自由に活用できるが、その対象は必ずしも全ての従業員ではないかもしれない。単にBtoE「従業員」というと、どうも企業からIT機器やソフトを社員に「使え」と押し付けられる印象があるが、CinB(顧客企業の社員を一般ユーザーとする)という考え方であれば、よりユーザーフレンドリーなインターフェースになるだろうし、そのまま用途を少し変えれば、BtoCの商品にもなりうる。
 
 別にバズワードを作ろうとかそういうのではなく(苦笑)、BtoBtoC、または、BtoCinBの志向で事業戦略や商品企画を組み立てることが今後のIT関連事業の要諦になるだろうと思っている。