まちがいだらけの『新規事業開発』

 「まちがいだらけ」と言い切っちゃうのはいささか言い過ぎかもですが...
 
 新規事業開発もしくは社内ベンチャーが必要だと社内でも叫ばれて久しい。巷にこれだけ『イノベーション』と言う言葉が出れば、どんなに世俗に疎い経営者(!?)でも、意識せざるを得ないほどである。
 当然、この手の担当者が専任または兼任で任用され、新しい事業の企画を行っていくのだが、この社内ベンチャー、新規事業開発の担当という仕事にはかなり誤解も含まれているようである。
 自社においても良くあることだが、実は他社にも案外多いと聞くいくつかの事例を紹介したい。
 
①:(全社)商品提案制度を作るが、単発で終わるか、やがて風化する。
 
 「全社的」と言えば、必ず社員全員による“提案制度”を実施しようと言う声が上がるかもしれない。社員の提案が出来る仕組み自体はすばらしいことであるし、自分もこの制度を企画・運営した経験がある。

 ただこれにはいくつかの落とし穴もある。
 ・商品提案を評価する組織・人材が必要だが、既存事業部は提案に興味がないし、良い企画でもコミットしない。
 ・「昔考えたことがある」提案で没になった案件は、ほとんど採用されにくい。
 ・提案のレベルがその数と比べると総じて低い。
 ・提案をした後、事業化までの道筋が不明確。
 ・提案者の人材評価に終わるきらいあり。
 ・提案を出すこと自体を望まない上司がいる
 etc...

 このような結果から、提案制度のみの新規事業開発は、不発に終わってしまうことが多い。
 
②:新規事業開発として、経営企画員自らが「事業開発者(の一人)」となる。
 
 ①とは逆に、既存の商品企画者や事業担当員に密着、ハンズオンの形で共に事業化を応援していく形である。これは重要な手法であり、必ずしも間違いとはいえないが、実は落とし穴もある。

 ・事業開発のロードマップがないまま、俗人的に企画・開発を行うため、後が続かない。
 ・ハンズオン中の経営企画員は中途半端な知識で事業企画に携わるが、自己のミッションとして、一つのテーマに埋没しがちになる。
 
 この場合の最大の落とし穴は、本来、新規事業開発を生み出す仕組みや風土を鳥瞰的な立場で持続可能的なものとして企画しなければならない経営企画部門が、近視眼的に一つのテーマに埋没してしまい、中長期目線での仕組み構築が出来ないことである。
 厄介なのは、経営企画部員の心理的な面として、サスティナブルな新規事業開発の仕組みを作ること(資金の投下基準や、プロジェクトマネジメント、提案の仕組み構築やインキュベーション、等)で、社内の多くの部門や役員と喧々諤々するよりも、一つの商品企画に関わることが楽だし、やっている気分がすると言うことにある。
 サスティナブルな仕組みを構築するには数年掛かるが、この短いサイクルでの成果主義の中では、個別商品企画の方が成果を出しやすいことも原因に挙がる。気乗りして成果を書きやすい方に流されるのはある意味で当然とも言えよう。


 新規事業開発を担当する人(多くの場合、経営企画担当)は、非常に多岐にわたり積極的に関与し、且つ個別の商品や事業ではなく、新規事業開発のインフラプラットフォームを構築するという仕事が必要になると自分は考えている。

 その意味で、『ベンチャーキャピタル(含むコンサルティング)』を敢えて社内に作ると言うことが必要なのではないかと思われる。
 
 個別の内容については、また別の機会に記したいと思います。