技術者以外に適用する「20%ルール」、『社内ボランティア』

 古くは3M、最近ではGoogleで一躍有名になった社内の規定で、「20%(15%)ルール」というのがある。(推測だけれど)これは“週に一度は自分の好きな研究に時間を割いていいよ。それで新しいsomethingを生み出して”というメッセージであり、週の出勤日の変化で、3M(週6日勤務のうちの1日)15%やGoogle(週5日勤務のうちの1日)20%等と勝手に解釈している。
 ちなみに、3Mでは「使っても良い」という“権利”なのに対し、Googleは「使わなければならない」“義務”らしいので、若干ニュアンスは異なるが、技術者には特に、こうしたルールに一種の「イノベーティブ」な企業風土を感じられ、やりがいやモチベーションもアップするのかもしれない。

 ただ、上記企業の方に直接聴いたことはないのだが、この対象者がたとえば社内のスタッフ部門や営業部門だったりすると、「“研究に時間を割いてもいい”っつってもなぁ」となるのではないかと思う。営業部門は数字で業績や評価が決まるので、「そんな暇があったら営業したほうが良いや」となるかも知れないし、忙しいスタッフ部門の人は「そんな暇があったら事務のひとつでも片付けたい」となるのかもしれない。評価されるされないは勿論、自らのモチベーション向上に繋がらない可能性もある。
 
 そこで、私個人としては、そうした人たち全てを対象とした“20%ルール”として、『社内ボランティア』を是非推奨したいと思っている。(実は自分もやってたりする:笑)
 
 ここで言う、「社内ボランティア」というのは、CSR企業宜しく会社の前を掃除するとか、仲間の愚痴を聞いてやるとか、そういう類の話ではもちろんない。
 例えば、営業であれば、「自分の担当でない商品やサービスを販売したり協力したりする」というのは手っ取り早いし、中には「別の商品の販促を手伝う」「スタッフ部門の作業をやってみる」でもいいし、中には、「やってみたかった商品企画や研究」でも良いかもしれない。
 スタッフ部門なら、「他のスタッフの仕事も手伝ってみる」「これなら自分でも売れるかもしれない商品を売ってみる」「関連会社の業務コンサルをする」「新規事業のサポートを実践する」なんかでも良い。要は自分がやりたい、やってみたかったことや、日頃お世話になっている人の仕事を肩代わりしてみたり、売上や生産、企画開発などに協力するなどをやってみるのである。
 
 これは、一昔前なら、「モチは餅屋」「役割明確化」に反する行為として、組織的でない行為と扱われ時には処罰の対象になる行為でもあったかもしれない。今でもそのような「役割」を重視する会社は多いと思う。

 しかし、これは組織風土の面から見て、下記のような効能もあると思われる。

 ●他部門の仕事が分かることで、他部門の人の仕事の内容や苦労が分かる。
 ●意思を持った人間が協力関係を築くことで、社員の信頼関係が醸成される。
 ●社員の潜在的なスキルや能力が開発される
 ●自分の仕事を別の担当員がして見せることで、自己の仕事を客観的に見つめなおせる。
 ●自分の担当業務を別の人がうまくこなすことがあれば、ちょっとした競争心や向上心をくすぐられる
 ●異動によるコストの負担や人員の再配置の検討を行う必要がない。
 etc...
 
 なによりも、会社員としての人間的成長が促進されることは間違いないと思う。

 勿論、全てがうまく行くというわけではない。一番重要なのは、自己の興味と習熟がマッチしたボランティアを行うことで、貢献を意識する必要がある。
おそらく、このような「仕事のボランティア」は、行う頻度や熱心さよりも「貢献度合い」の方がむしろ重視される可能性があるからである。
 
 仕事が全て「ボランティア」ではいけないし、そもそも何かに強い“専門性”をすでに持っているなら、それが発揮できる組織に所属することが望ましいといえる。しかし、ただひたすらに自らの仕事を黙々とするだけではなく、自分が今の仕事以外に貢献できそうな仕事や今の仕事を円滑にするために時には立場を逆転してみることで、担当員の気持ちを理解するなど、があることは、きっと組織におけるマイナスにはならないはずである。
 
 よく組織内での役割明確化する人は、組織を工場のラインのように例える。役割明確化こそが生産性の向上だといいたいらしい。
 
 しかし、工場のライン生産は、どこかでストップすると少なくともそのラインに関係する工程は全て中断される。経営組織の中でもしもある部門の機能低下が即ち企業の競争力の低下に直結するとすれば、これほど恐ろしいことはない。
 むしろ、社内の組織やその構成員はもっと有機的で補完的であるほうが、きっと競争力は維持できるだろうし、相互作用の回数が増えれば増えるほど社内でイノベーションも起こりやすいのではなかろうか。
 
 大きな声では言えないが、私も20%弱くらい、ボランティアの仕事をしてたりするが(もっとあるかな?)、『社内ボランティア』いう会社の中での働き方がスタンダードになるのではと密かに思っている。(ブログに書いて「密かに」はないか...笑)