組織は戦略に従う?戦略は組織に従う??

 経営を学んでいると、よくタイトルのようなことを耳にする。
 
「組織は戦略に従う」・・・アルフレッド チャンドラー
「戦略は組織に従う」・・・イゴール アンゾフ

 二人とも、あらためて解説をするのもおこがましいほどの世界的な経営学の権威であり、チャンドラーは1962年の「STRATEGY & STRUCTURE」で、アンゾフは1979年の「STRATEGIC MANAGEMENT」でそれぞれ発している、有名な提言である。
 
 これはどちらが正しいのか?という議論がよくされて、「両方が正しい」のが定説となりつつも、コンサルタントとしてはチャンドラーの意見をよく採用して戦略や政策の提言をすることも珍しくない。
(たまに、そうしている自分に気づいたりする...)
 
 私自身の解釈としては、実は、これらのワードの解釈には、「組織」の後に言葉を入れることによって、その関係性や優先順位がハッキリするのではないかと考えている。これは現在支援している企業から自分自身が実感している部分でもある。
 
 まず、チャンドラーの提言の「組織」は、その後に、『構造』というワードが入る。つまり、「組織“構造”は戦略に従う」である。
 企業やその組織自体が、何のために、何を目標に、どのような方法で、組織を維持継続・発展させていくかについてがまずあり、それに応じた内部の組織構造が決定されるという意味である。
 
 どのような攻めや守りを行うのか、どのようなチームを編成するのか、サッカーのフォーメーションなどはよい例である。内部組織を決定する際に「戦略」を考えない企業や組織はまずないであろう。
 
 次に、アンゾフの提言の「組織」は、その後に、『風土』というワードを入れると理解しやすい。
 立派な戦略を立てても、組織の風土や構成員の興味やモチベーションを引き出すことが出来なければ、その戦略は実行されないか失敗に終わる可能性が高い。
 そうした意味で、アンゾフの命題は、「戦略は組織“風土”に従う」と表現できる。
 
 こうして書くと、実はこの関係性が見えてくる。
つまり、
 
 組織風土 → 戦略 → 組織構造 
(矢印は影響要因の関係を表したもの。)
 
 戦略を中心とした場合、それに強い影響を与えるのが組織風土であり、逆に戦略に最も影響を受ける(べき)のは、組織構造となる。しかも、興味深いことに、組織構造により組織風土はかなりの影響を受けてしまう。
 つまり、この三つはループする、とも言える。
 
 
 今、多くの企業で、組織風土についての話題に事を書かない。
ソーシャルツールの社内の活用はもちろん、組織風土の診断コンサルティングの増加や、TVでの企業紹介の際にも組織風土が良い等と取材対象となることが多い。これらは、この関係性に半分無意識に反応しているのだろうと思える。
 
 企業を変革する上で、もっとも困難且つ重要なのは、「組織風土」ということができるかもしれない。しかも、簡単にはコントロールできないという点で、今後も多くの意見が交わされていくものと想像される。 
 
 もっとも、これは、小規模な企業にはちょっと当てはまらないかも...である。