野中教授の講演

昨日、無料講演だが、知識創造、ナレッジマネジメントイノベーション理論において世界的権威である、野中郁次郎教授の講演を聞いてきた。
40分のショートセミナーではあるが、やはり自分にとっては印象深いものとなった。
 
その中でのキーワードを一つだけご紹介。
 
イノベーションの創出の最初にあるのは、知識であり情報ではない。
知識は、最初は全て“主観”から始まる。客観、つまり形式知の集合は知識ではなく、情報である。』
 
 新規事業開発、ベンチャー、等のイノベーションの最初のスタートは、個人の「主観」から始まるということ。そしてそれは「何のために、そのコトやモノが必要なのか?」という根源的なものを追求するのと同時に、Common Good(社会善)を強く主張できるかどうか、が成功への鍵となる、とのことである。


 以前、某所で自社の役員とディスカッションした際、彼が言った、「アイディアの種は何でもスクリーニングして良いというわけではない...」という意見がとても印象的で頭に残っている。
 確かにもっともな意見で実にそうしたいが、無限に出てくるアイディアに対して、経営資源や時間は有限であるのも事実である。何かに着手するにはどうしても優先順位が必要になる。自分自身このジレンマに時折陥ってしまう。
 
 このときにもしもアイディアを選ぶ必要があるとするならば、私は上記の
野中教授の言葉を思い出したいと思う。
「それをビジネスとしなければならない程の“強烈な主観”」と、「“社会善”(Common Good)」が両立した時に、きっと事業化する価値は最大になっている筈である。
 
 自らのアイディアを実現したいという「自己実現欲求」と、社会に対して何かを提供することで貢献したいという「社会的欲求」が高次元で一致できるかどうかが、事業開発の最初のキーとなる筈である。このある意味「単純な」気づきは、実はベンチャー企業家や個人などの方が理解しやすいようで、自分自身が勤める会社でも大よそこのような話は聞いたことがない。それほどまでに、企業内では様々なバイアスが働きやすくなっているのが事実である。売上や利益などの数値、他社戦略のベンチマーキング、市場シェアと動向分析、etc...
 
 
 後でもいいはずのものが、先に来て意思決定をより困難なものにしているのかもしれない...