「望まれる人材像」と年功序列

 昔、まだ30歳くらいの頃(十数年前かな)に、猛烈に会社が嫌になり「もう限界」まで来た。そのために転職活動をしたことがあった。その時、世間一般ではこんな風に言われていた。
「これからは、英語、会計、IT の知識が必要である。そういう人材が望まれる...」自分自身も、英文会計を学んだり、ERP導入関係の書籍を読んだりした。
 
 ところで、少し前の調査によると、文型人材と理系人材の年収比較があり、文系の方が約5000万円程生涯賃金ほど高いことが明らかになったが、企業は理系人材を多く求めており、2011年の新卒採用(内々定取得ベース)では、理系が67.8%、文系が45.9%であるらしい。
 
 この二つのデータ(約10年ほど乖離があるが)は、実はいまだに企業が年功序列であり、マネジメント層が「ないものねだり」しているのではと危惧してしまう。
 
 大企業に勤めていると判るが、国内関係の部署にいれば英語を使う機会はないし、経理系のポジションでなければ、会計系の資格も活かしづらい。ITもしかり。全て出来れば言うことはないが、結局それらの知識は副次的なものであり、年配の「マネージャー」の利用価値が高まるだけと思われる。
 現に、そうした資格や学習は、ほとんどの企業では人材査定の基礎項目として多少の加点があるか、全くないかである。
昇格を伴う人事査定の中心項目にはなっていないことが多い。

 実は、私の上司も、ITはそこそこ出来たが、英語はからきしダメで、会計はちんぷんかんぷんだった。そんな中で私は前からもしも学ぶならば、「マネジメント」を学ぶべきと考えていた。で、そこから「組織人事」「マーケティング」「会計」「IT」等を学びたいと思っていた。
順序はさほど重要ではないが、“若手”と呼ばれているうちに「マネジメント」や「経営戦略」は、学ぶべきである。(理系、技術系なら、MOT(Management Of Technologies)であろう。)
 
 企業が理系人材を欲しがるのも、求められるものが英語、IT、会計、等のテクニカルスキルであること、を考えると、要は「使える人材」が欲しいのだが、私はこの「使える」という部分に若干の嫌悪感を憶える。 
 大企業はいまだに多くが年功序列のところも多いが、上記のスキルが不足しているマネージャーや役員も多い。彼らがないスキルを若手人材に求めることで、結局は彼らのために貢献せよといわれているように聞こえてしまう。
 
 事実、博士や司法試験合格者などが就職できないこの状況から見ても、そうした知識のない(→努力をしない)中高年がいかに多いか(これは勿論一概には言えないのだが)、日々のこと・自分の保身だけを考えて振舞うマネージャークラスがいかにたくさんいるか、企業に居るとこのことが実感できると思う。
 
 年功序列でやっとのことで(たとえ小さくても)組織の長とやっとなれたのだから、このポジションはキープしたい。自分も何年も企業で努力したのだからこのポジションで当然、と考える中高年のマネージャーは実際には多い。だから、年齢を「キャリア・経験」と置き換えて実際には役に立つかどうか判らないナレッジがあるものとしてみなしている。

・若いなら、まずは「マネジメント」を学びなさい
・年をとってからでも、個別スキルの学習をすることは誇らしい
 
 努力を怠らない人材こそ、年齢に限らず、人をリードするに相応しい。勿論、資格やスキルだけの話ではない。
 
 若い人たちは、自分のキャリアを考えて、こうした年配者の「身勝手な要望」としての「使えるスキル」に惑わされることのないように、学んで行って欲しいと思う。
 
 また、年配者やマネージャーは、「自分に足りないもの」を若手や新入社員に押し付けるようなコメントは控えるべきである。
 先日もTVで「i-PAD教室開催」のニュースをやっていたが、受講者は全て70歳以上だそうである。人はいくつになっても学べるのである。