震災地域の産業復興へのプロボノの活用と制度化

 この度の筆舌に尽くしがたいほどの震災で、大きな被害に遭われた方々、また今も避難所や自宅待機などで不自由な状況にある皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

 災害から数日が経ちましたが、ようやく被害の全貌が見え始め、一方では避難されている方々の生活はいまだ困窮している状況がマスコミなどで連日報道されています。
 私自身もそうですが、被災地の報道やニュースなどの見る度に心がちぎれそうなくらいの悲しみを感じ、自分にも何か出来ないかと多くの方が感じておられるのではないかと思います。活躍されている自衛隊や消防、警察の方々やNPOなどのボランティアの方々のご活躍を心より応援している毎日ですが、一方では自分は何ができるか?と感じている人も多いと思います。

 今回の震災は産業的なインパクトとしては、今回の震災での損害額は20兆円超とも言われ、日本経済への打撃は計り知れないものがあります。これは震災(原発事故も含む)の方々の産業が壊滅状態にあることを意味しています。経済は心理学的な側面での影響が強いことも考えますと、この地域での産業復興こそがまさに被災した地域だけでなく、日本全体の産業活性にも強く影響するものと思います。一日も早い経済復興が必要であると思われます。
 しかしながら他方においては、産業界は東京も含め、東北・北関東エリアからの撤退、西日本への移転を図るなどして自社経営の防衛にも必死です。経営として、自社の存続や利益の確保は当然の行動ではありますが、サラリーマンの方で上記のように「自分も何か役に立ちたい」と思う方にとっては、ある意味で冷徹と感じられる意思決定も存在します(『当社はなぜ自社の利益を優先して復興に協力しないのか!』等)。

 「自社の利益を優先」とする企業と単純な財政政策だけに経済復興を期待するには時間的にも厳しいものがあります。官民が復興に対して協力していく必要がありますが、この「民」は企業というよりもさらにもっと「個人の力」にも頼っても良いのではないかと私は思います。
 
 そこで、提案があります。

 私は、プロボノ(専門的知識を持つ者が、無料でそのサービスを行う事で社会貢献を果たそうとする活動)の団体に参画しています。プロボノ団体は、いくつか対象や成果物にいくつかの違いがありますが、主にNPOやそれ以前の団体、組合組織や中小・ベンチャー等の法人や経済団体に対して、WEBやシステムの開発、各種コンサルティング等のサービスなどを提供しています。多くの会社員の方、専門知識を持つ方、が東京を中心に活動を開始しており、いくつかの団体や個人が活動されています。

 このプロボノ活動を、国の緊急的な経済復興支援策の一つ、「経済ボランティア」施策として展開していただきたいと思います。
 以下、思いつくままにガイドラインを記します。

●暫定的なプロボノの支援団体を、官民共同で新設する。
●復興地へ提供するプロボノでの各種サービスは、原則無料支援とすること。
プロボノ支援団体は、経済産業省はもとより、被災地及び周辺の省庁及び下部団体や商工会、
 中小企業支援センター、その他民間等の団体と連携を図り、地域経済の復興を図る。
プロボノに参加する人材は、企業に勤める人材を中心に自営業者、NPO等も参加可能である。
●企業がプロボノを派遣する場合、人材の現地への派遣する期間や経費などについては、人材の
 意思と会社の同意により決定する。
●企業は、プロボノに参加する人材を募ることができる。但し参加は全て人材の意思によるもの
 であり、企業は強制的には自組織の従業員にこれを課すことは出来ない。
●企業は自社の人員を参加させないが、資金のみで応援することも出来る。
 (1口1万円〜寄付での扱い)
●個人がプロボノに参加したい場合には、原則として所属勤務先の同意を必要とする。
 ただし、①上記団体が必要な人材としている人材、②個人も参加を希望している場合、の両方
 が満たす場合には、企業はこれを断ることができない。
●本施策に関する経費勘定は寄付も含め全額損金扱いとし、同額を法人税納付金額より一部免除
 されることとする。
etc...

このようなプロボノ団体の新設は、「日本株式会社」における“インハウス型総合サービス部門”として、国難の際の産業横断型組織と捉えらればよいと考えております。日本株式会社の危機ならば、日本のビジネスマン全員が危機に対処するべきではないでしょうか?
 
 経済の復興には、人、金、モノ、情報、そして何より「知識」と「熱意」が必要と思います。
日本企業全体の問題として、今後地域をサポートしていくためには、企業も単なる義援金のみならず、積極的に人材やナレッジの提供も行って行くべきではないでしょうか。本来企業は大規模であればあるほど、社会基盤の上に成り立っている存在であり、社会に貢献できることは企業として誇らしいことです。こうした企業は日本のみならず世界にも広く知れ渡るようにすることで、企業にとっても事業上のメリットを出すことができるようにすべきと思います。
 被災地域の方々や地場産業は勿論、応援する人、企業、諸団体、国や地方公共団体、の全ての方々が、困難に立ち向かうことで出来るだけメリットを受けられるような仕組みであるべきだと思います。
 
 以上、稚拙な内容ではありますが、何か役に立ちたいサラリーマンや専門知識を持つビジネスマンの声として、より多くの聡明且つ志のある方々に伝われば幸いに思います。