新しいビジネススクール

 今月号のハーバードビジネスレビュー(以下、DHBR)の記事で、ケンブリッジ大の教授の記事の中に、気になる記事が書かれていた。

 「ケンブリッジ大学MBAプログラムの卒業生を対象にアンケート調査を行い、同プログラムでの経験が役に立っているかを5段階で評価してもらった。卒業生が最も高く評価したのは、『教室の外で学んだこと』だった。」
(アンケート結果)
 4.3  ビジネススクールで得た授業以外の経験
 4.2  コンサルティング・プロジェクト(実際の企業でコンサル実習)
 4.0  戦略やリーダーシップに関する授業
 3.5  個別の主要な需要

 さらに、同氏は、「何よりも先ず、マネジメント教育は協働(コラボレーション)を学ぶべきだ」としている。
 
 この結果はとても自分にとって興味深い。
 
 先日、ここで、「社会人2.0」ってタイトルで書いた。
 実は、最近ソーシャル的な活動や企業を超えた対話や問題の共有を行う活動をしている方々とよくお会いし彼らを新しい社会人像として「社会人2.0」と(勝手に)名づけた。勿論、ボランティアやNPO等本格的なソーシャル起業家の方も増えているのだが、昔は大学を卒業して勤め人になることを「社会人」と呼び、こうした人たちが今の企業に勤めながら新しい社会との関係性を模索する様が自分には、社会人の『進化』に見えたからである。

 MBAといえば、なんといってもマネジメントや経営コンサルタントの登竜門であり、経営の専門知識も豊富であるが、上記のアンケートによれば、どうやら単なる高度な「“形式知”の吸収」から、「“暗黙知”の共有」に、その価値がシフトしているように思える。MBAには、多くの社会人や社会人経験者がいることから考えても、この価値のシフトはビジネススクールのあり方を変革するキーワードになるかもしれない。
 
 少し大胆なことを言わせてもらえるなら、このような結果から思うに、「ビジネススクールは、何も大学にある必要はない」と思う。
 もちろん、大学生がそのまま学問として経営の専門知識を学びたいというのはとてもすばらしいことだが、実際にはその価値は上記のアンケートによれば、あまり高い評価にはない。必要としているのはコラボレーションである。
 そしてそこでの中心となる存在は、この「社会人2.0」の人たちではないだろうか?
 
 もちろん、協働するには、各々の基本となる知識や、価値を生み出すために何を貢献できるのか、という部分がある程度は必要になるだろう。
 しかし、今必要なのは、多様な知の協働であり、そのような「場」こそが、今後の“ビジネススクール”となっていくような気がしている。
 
 自分自身でも、今後そのような場作りに、関わって行きたいと思っている