法人税減税の効果を考える!? ②

 先日のブログで、法人税減税後、企業はその減税分をどのように配分する可能性があるかについて書いた。勿論、減税分を「次期繰り越し」の剰余金等で次年度以降の研究開発経費に充てるという可能性はゼロではない。だが、イノベーションが不足している経済界において、小額の剰余金が次期の研究開発投資に有効だ!と言い切ってしまうのは、正直、論理の飛躍ではと疑ってしまう。
 大企業の経営者は圧倒的に東京が多いが、たしか「江戸っ子は宵越しの金は持たない」のではなかったか?
 
 そんな中で、今政府税調より、法人税減税を行う代わりに研究開発投資促進税制の廃止を盛り込んだ案やナフサ免税の課税化などを提示することで、逆に経団連などから大反対を食らっている。
http://bit.ly/dFSuYF

 昨日も、とあるニュース番組で、この記事を取り上げていた。本当にこの国の税を預かる人や財政担当者は、経済成長などどうでもよく金が取れればそれで良いと考えているんだと実感した。だが、同時にこれはおかしな理屈であり、税は本来、「収益から一部を国に貢献してください」とうことで課されるものが多く、当然経済成長して黒字企業が増えれば税収はおのずと増える。
 したがって、財政担当者や政府税調は、本来景気対策の後押しを「税を使って」行う必要があるのである。
 この記事を見ていてもそう感じるが、政府税調も経団連も何か自分の理屈だけを考えているようにしか映らない。(経団連に至ってはおそらく過去のただの一度でも彼らがこの国の経済を心配していると感じられる発言を聴いたことはない。)
 
 さて、今回の焦点について考えてみる。
 法人税を減税して、研究開発減税を廃止したとする。(新規研究開発費用の15%、または研究開発費用全体の10%の額のいずれか減税分が増加する)
そうすると、減税分がプラスされたような印象になるため、研究開発費自体を若干抑制する。企業経営者には最終的な利益を出し、株式配当役員報酬を増加させたい意欲が強いため、ここをすぐに削減できない一方で、来期の研究開発に当てる剰余金も増やしたいと考える。つまり、利益総額が必要になるので、結局は来年の研究開発費自体を少し抑制する必要があると認識するに至る。

 つまり、そうした経営の心理により、投資は鈍化する。
 投資が鈍化すると、乗数効果が働きにくくなるので、結局景気後退要因になる。
税金を右から取って左に渡してたから、今度は右から取るのを減らして左に渡すのもちょっとやめようかな、という安易な発想が、経済の悪化に繋がってしまうのである。
 
 ちなみに、
 この「ニュース番組」の元財務官僚であるキャスターは、このニュースに矛盾を感じたまではよかったが、「法人に関する税だけでなく、所得税や消費税など広く徴収を検討し未来に借金を持ち越してはいけない!」と、一見もっともらしいことを言っていた。

 もしも、研究開発減税が廃止され企業が投資を抑え始め、さらにはその穴埋めに所得税や消費税の増加導入が同時に行われてしまったら、一体どうなってしまうであろうか?今のデフレ状況の中で、消費と投資を抑制するような税制改革が行われてしまうと、結局デフレが促進されてしまい、税収はさらに悪化し、未来へのツケを返すどころか増やしてしまうのではないだろうか?

 「もっとみんなから取ればいいじゃん」的発想が、下手をすると、将来のツケを増幅させてしまうリスクを忘れてしまっている。
  
 未来に借金のツケをまわさないためには、税収総額の上昇が必要であり、それには景気対策によるものが欠かせない。税は本来「儲かっているところから取る」のが基本だからである。景気対策は、すなわち消費と投資を増加させることであり、そのために経団連はじめとする民間企業は「イノベーションの創出」に全力を尽くし、消費を促進させ、収益を上げ、税金を払うことが、社会に存続する企業としての責務ではないのか?

 イノベーション大国を目指しているニッポンが、同時に世界でもアメリカと並び法人税が高いことは、ある意味では「未来にツケを残さない」という志が最も高い企業のあり方であり、世界的にも誇らしいともいえる。

 法人税を下げろとのたまっている暇があるなら、全ての企業の発想の軸を、金からイノベーション創出にシフトして、法人税率を世界一にすることを目指すべきと思う。そうなれば、日本企業は「世界一志の高い企業が本社をおく国」になる。

 そんな日本に住み、そんな日本企業に勤めることができれば、きっと誇りに思う。