幸福の乗数効果

 先日、リーダーシップ開発のためのコーチンセミナー(『エクゼクティブコーチに学ぶリーダーシップ開発』http://drc.diamond.co.jp/cl/) に参加してきた。コーチングについて少し学びたいと思っていたが、2時間少しの中ではたしかにその片鱗くらいしか学ぶことは難しかった。だが短時間の中でも多くの気づきを得ることができたと思う。
 その中で非常に印象に残ったのは、「リーダーは最後は『自責』でなければならない」というものであった。周りに起こる納得し難いできこと、ちょっと残念な出来事、は最終的には全て自分が何かしらその原因として関係している、という考え方である。
 それを聴いて、そういえばtwitterでも、たしかそんな話をされたことを思い出した。
 
 話は少し変わって、ここのところの法人税減税や事業仕分など、財政に関する話題が多く、財政政策は税金など生活にも関わる問題であることから多くの人の関心をひいている。マクロ経済学的な観点ではこうした財政政策は、適切ならば有効需要を生み出し景気を上昇局面に乗せる狙いがある。そうして初めて納税額もふえるので、財政状況も好転するはずである。そもそも借金はコスト削減だけでは返せるものではなく、収入があればこそである。
 そしてこの財政政策で重要な概念に「乗数効果」がある。簡単に言えば、公共投資や減税により→雇用や消費が生まれ→国民所得が増え→さらに消費や投資が増え→国民所得が増え....という具合に掛け算のように国民所得が増加する効果のことである。
  
 で、実は一見関係ないこの二つの事柄から、ふと思いついた。

 ひょっとしたら、「幸せ」にもこの乗数効果があるのではないか?
 
 とかく、人間は他者に影響される動物である。きっとそれは数ある生物の中でもダントツに「社会性」が強いからに違いない。 その証拠に、暗い話をを聴いたりすると元気なくなったり、暴力的なシーンは子供に見せるのは良くない、などと言われる。人の意見やメディアに影響されやすい。

 これら他人への影響にも、もし「乗数効果」があるなら、負の乗数効果を閉じ込め、正の乗数効果を大きくすれば、社会幸福度を上げられる可能性があるのではないだろうか?人に与えそうな悪いこと(負の乗数効果)を閉じ込めて、良い影響(正の乗数効果)を大きく与えられるように振る舞い続ければ良いのではないか?
では、負の乗数効果を閉じ込めて正の乗数効果を大きくするとはどういうことだろうか?
 
 この解が、「自責でいく」ということではないかと思う。
 
 何か悪いことがあったとき、「●●が悪い!」「△△がいけない」と他責にしがちである。政治などはほとんどそのオンパレードで辟易とする。TV番組を見て政治問題をやっていると、大体は文句の一つでも言いたくなることの方が感心することよりも多い...まぁ、政治がそういうもんだとあきらめている人も多いが...

 こうした「悪い」乗数効果はできるだけ「自責」で閉じ込める。つまり、何か良くない結果があったとき、関与者は内省に努め、他者はそれを静かに見守る必要がある。

 反対に、良いこと、好ましいことなどは、比喩やたとえ話、その応用などを用いたり、人への賛辞などを活発に行い、「乗数効果」を発揮させるべきである。雑誌など他人のゴシップや批判で経済的利益を得ようとするメディアも多いが、経済的な制約のない(→つまり、情報で儲ける必要がない)ソーシャルメディアはこうしたことを行うにとても有効なメディアだと思う。

 国民(幸福)所得の増加には、幸福の因子の「乗数効果」が必要である。そのためには、リーダーはもとより多くの人たちが「自責で行く」「利他的になる」という行動様式がキーになっていくのではないかと思う。
 
 翻ってみれば、経済学という学問は実は貨幣以外にも応用のできる考え方なのかもしれない。(そういえば、Gross National Happiness(国民幸福度)という指標もあったな...