『働きやすい会社』と『働き甲斐のある会社』

 先日の21日(日経では20日!?)に『働きやすい会社ランキング』が発表されていた。私の所属する企業もランク表示されており、昨年度に比較すると順位をかなり上げた。
 ところが、そこに所属している自分としては、ちょっとばかりこれには違和感がある。
 なぜ、急に「働きやすい会社」になっているのか?

 一方、以前より気になっている調査で、『働き甲斐のある会社ランキング』というのもある。http://www.greatplacetowork.jp/best/list-jp.htm
 
 一見良く似た、この二つの調査指標は、実は考え方がかなり違うらしい。

 大きな違いは、「働きやすい会社」は働きやすいだろうと想定される企業の人事施策が導入されているかどうかを企業側に問うものである。一応、一般サラリーマンの回答も3000人弱程度はあるが、回答した企業の人とは限らないし、結構母数の人数としては少ないと感じる。(大手企業が何百社もエントリー対象となっているのに...)
 他方、「働き甲斐のある会社」はその対象となる企業で現在働いている人の生の意見が相当の割合で含まれている。つまり、そこに勤める社員側から見て自社「働き甲斐」の評価である。「働き甲斐」と言うキーワードには、社員のモチベーションが多分に含まれているように感じる。
 
 個人的には、後者、つまり「働き甲斐のある会社」ランキングを支持したい。
 
 理由は、「働きやすい会社」は実は人事施策があるかどうかが大きな判断基準であり、実際それが活用されているかどうか怪しい。
 例えば、管理職が1000名近くいるのに女性管理職が未だ1人しかいない会社で、翌年に3人になったとする。
 管理職の女性の締める割合は0.1%が0.3%に上昇したが、そもそもが信じられない低い数値である。だがこれを、「ダイバーーシティ制度を構築し女性管理職を任命した。結果管理職女性の比率は対前年200%上昇」と言えば、その指標は一気に上昇する。しかし実際にこういう会社の社員に聞いてみたところ、「そんなことがあったのか?」と首をかしげる、と言うことも少なくない。
 実際の評価は知らないが、使われてなかったり名前だけで実の伴わない人事制度を振りかざし、「働きやすい会社」とするのは、正直あまりいけ好かない
 
 実はもう一つ、理由がある。
 
 企業は社員にとって必ずしも「働きやすい」ことだけが良いとは思わない。企業に勤めていれば笑顔もあれば修羅場もある。その中で自らがビジネスマンとして何かを達成したり向上していく喜び(マズローの5段階欲求説で言えば最上位の自己実現)、がそうした苦労に最終的には報いてくれる。報酬制度や勤めやすい制度だけでは、この「達成感」を満たしてはくれない。人生は常に悲喜こもごもなのであり、その中で自身の「達成感」や「存在感」と言うものを実感できるのではないか。
 つまり、「働く」ということの中には、マスタリー(自己を高める実践)や、自律と自立の概念がとても重要な要素であり、「働きやすい」と言うワードは直感的には人間としての「深み」が足りないように自分には感じる。
 
 個人的な意見で恐縮ではあるが、これはサラリーマンとビジネスマンの違いとも思っている。サラリーマンは「サラリーをもらう人」であり、どうせお金をもらうなら働きにくいより働きやすいほうが良いのは当然である。
 他方、ビジネスマンは、「ビジネスを行う人」なので、金銭以外のビジネスをする目的がある。そこにはいろいろあるだろうが、ビジネスを成功させること、そこに自身のビジネス面での目標達成を通じた「自己実現」を目指しているように感じられる。両社はその意味で、圧倒的に異なる。

 つまり、受動的と能動的との差と思えるのである。人生どうせなら能動的に生きたいものである。
 
 自社にどうも元気がない、ギスギスしている、官僚的だ、などの感想を抱いている方であれば、自社は「働きやすい会社」ランキングよりも、「働き甲斐のある会社」ランキングに登場したほうが良いと感じられるのではないだろうか?
(ちなみに、「働きやすい会社」はルールを人事部門等の組織が作るが、「働き甲斐のある会社」はルールは自分たちでクリエイトしているそうである...)

「働き甲斐のある会社」で、自ら何かをクリエイトし、自己を高める経験がしたいと素直に思う。どうも「楽して金儲けしよう」といのは私の場合、性に合わないというよりも、そんな旨い経験がこれまでないので想像できないでいる...

 何より、働き甲斐があれば、その後に飲む酒は旨い...