New PDCA サイクル

 経営は以前の『計画型』から『仮説検証型』へ移行するべきと言われて久しい。確かに、不安定且つ不連続な時代では、計画を立案しても、その土台や根拠となっている環境や前提が大きく変化する可能性が高く、計画が機能しない、というのが昨今の潮流である。
 
 ところが、新入社員の研修から、中小経営者へのセミナーまで、いまだに「PDCAサイクルを回せ」と説くコンサルタントや上級管理者は多い。PDCAは、Plan-Do-Check-Actionの頭文字をとったものだが、最初の“Plan"が機能しないという前提では、理論的にはこのサイクルを回しようがなくなってしまう。
 
 そこで、『仮説検証型』の新しいサイクルが必要になる。
 
 その際、全く新しいサイクルを提唱する学者やコンサルタントもおられるが、ここでは仮説検証型の新しい「PDCA」モデルを提唱してみたい。
 
○新PDCAサイクル
 
 P・・・Prospect (予測、予見)
 D・・・Design (設計、デザイン)
 C・・・Challenge (挑戦、試行)
 A・・・Audit (監査、内省)
 
 従来の、経営環境が安定的で前提と出来る場合とは異なり、経営環境(社会変化、顧客の志向、経済動向、人々の認識等)が不確定な場合には、「仮説」を設定することが必要となる。
 まず、こうした動向や志向を予測、予見する必要がある。自社の提供する商品やサービスが、どのような人たちにどのように供給することでバリューを生むのかを予測、予見する。
 これが、最初の工程、「Prospect」である。
 
 次に、この予測や予見でバリューを生むとした内容を実際に描く(デザインする)工程が必要となる。予想しながら商品・サービスのみならず、経営全体を描いていくことになる。
 この「デザイン」は、これまでの知識をマニュアル化したようなものとは大きく異なり、未来デザインに近くなる。しばしば「創造的」であることを求められる。
 これが、二番目の工程、「Design」である。
 
 そして、この二つを合わせたものがいうなれば、「仮説設定」の工程ということが出来る。
 
 仮説が設定できれば、今度はそれを実行に移すことになる。これまでのDoと異なるのは、あくまでも「仮説」に基づいた行動になるため、その行動はただマニュアルなどにしたがって行う「DO」ではなく、チャレンジや試行に近いものになろう。
 これが、三番目の工程、「Challenge」である。
 
 さらにこうして行ったチャレンジや試行は、必ずその結果どうだったかを省みる必要がある。これが最後の工程となるAUDIT(監査)である。この場合の「監査」は、最初にたてた「仮説」に基づいた行動が行われたか、行動を行った結果どうであったか、の二つについてを精査することである。そのため従来の「check」というニュアンスよりも、きちんと振り返ることで次に繋げる意味でも「監査」というニュアンスがフィットする。
 最後の工程、「AUDIT」である。
 
 新しいPDCAサイクルは、決して以前のPDCAを無視しているものではない。ただ、以前のPDCAサイクルが提唱されて半世紀以上が経ち、社会や経済のあり方が進化しているにもかかわらず、古い理論を金科玉条のごとく振りかざすのは、専門家としては少々みっともない。
 
経営管理(マネジメント)も進化するべきである。