若者の雇用についての独り言

 リーマンショック以降、景気が少しは戻りつつあると思われていた日本企業だが、若者の就職率は下降の一途を辿っている。一昔前の就職氷河期時代では、新規の雇用が企業の景気の調整弁になっていると批判されたが、それはもう昔のこと、今は調整弁にすらなっておらず低迷を続けている。多くの大手企業がこのデフレ時代を生き抜くために、“自社だけは利益を確保したい”と考えるために、逆に雇用が抑えられ結果的に消費が増えずデフレが進行する様は、まさにゲーム理論の「囚人のジレンマ」そのものに映ってしまう。

 そういう意味で企業は人材を“未来”とはみなさず、“コスト”とみなしているようにさえ思える。

 そんな中、「大手企業ではなく今は中小企業への就職に目を向けるべき!」と、学生側、中小企業側、そしてマスコミ側なども連日紙面を賑わしている。しかし現実にはそう簡単ではなさそうである。

 理由はこんな感じだろうか...

・学生側は、賃金相場の低い中小企業にはあまり魅力を感じていない
・中小企業側は、新人よりもむしろ即戦力を期待しているので以外にハードルは高い
・どのような中小企業がどのような募集をしているか、情報が不足している
・中小企業側にも、雇用を増加するどころか、雇用自体を見送る企業も多い。

 上記のような理由によるミスマッチは非常に残念なことである。

 自分は、バブル期入社世代であり、また学生時代は正直あまり勉強していなかったし(かといって、バブル期にある典型的な学生像とは真逆だったが)、職業や社会についてなんてまじめに考えていなかった。今の学生の方がよほどしっかりしているように思う。
 そういう自分なので、若い世代の人、特に自分の同時期よりも明らかにしっかりしていそうな優秀な学生の人達が就職できない・しない様を見ていると少し気の毒になる。だから、若い人に「中小企業に就職すべきだ!贅沢言うな!」とは自分には言えない。

 また、自分は中小企業のコンサルティングを志している。
 中小企業は、日本の経済のダイナミクスを支える重要な存在である。中小企業に優秀な人材が行くことは、日本の将来を考えるにすばらしいことだと思う。だが、自分はまだそんな中小企業を支えることを生業とするには至っていない。今も企業(しかも一般に言うところの大企業)に勤めている。
 
 だから、自分自身は、このような話を聞くと、とても申し訳ないような、自分も何かしなければならないような気になるのである。

 そこで、今回、少し政策的な提案をしてみたい。(もちろん、個人的な戯言に近いが。)
 
1:法人税5%減税の対象となる「大手企業」については、当該年度の採用人数が、全社グループの人数合計の1/37を下回るのであれば、一人当たり500万円程度を「特定目的税」として徴収する。

2:この「特定目的税」は、次の二つの活動への補助金として分配される
 ・中小企業の雇用に関するコスト
 ・中小企業経営を支援するコンサルティング事業へ分配
 
 まず、1について。
「人数の1/37」の根拠については、一般に定年60歳として、大卒者23歳で就職すると37年間勤めることになる。言い換えれば、37世代の人がいることになる。大企業の中での世代のいびつな凸凹をなくすために、各年代で同一の人数がいるようにする。これを促進するために、1/37未満の採用には、特別に税金をかけるものである。尚、金額の500万は、新卒2年分ほどの給与だが、特に根拠はないので、当初は2,3百万円でも構わない。

 2については、「大企業が雇用しなかった」ことで徴収した税の社会的配分を目的としている。そこに中小企業の雇用コストは当然だが、ここで言いたいのは中小企業支援対策としての分配である。
 中小企業がなぜ、雇用が苦しい、あるいは学生から見て魅力が薄い、かといえば、やはり給与水準と将来の安定性であろう。中小企業の経営をを中長期的に、しかも抽象企業自身の負担を減らした形で持続的に行うには、様々な政策が必要になる。今でも特定の人材の雇用については補助金が出るようになっているが、これを経営サポートする側にも分配することで、経営サポートが安価で且つ持続的に行うことができるようになる。
 むしろこうした使い方の方が、ただお金を渡すよりも、長い目で見て中小企業の経営を持続可能にするのではないかと考える。

 と、まぁ少々手前味噌な理屈になってしまって恐縮なのだが、本来の政府や税の役割から見て、あながち間違った政策ではないのではないか。

 方法は上記がふさわしいかは別としても、日本を支える若者と中小企業を支えることこそ、経済的なソーシャル性をもった政策であり、重要なことではないだろうか。勿論、そのような制度があろうがなかろうが、自分も少しでも今の仕事やプロボノなどを通じて、お役に立てればよいと思っている。