IT企業の“みのもんた”作戦

 私の勤務している企業グループでは、あまり大きくないがソフトウェア製造・販売事業も行っており、大企業から中小企業まで、それなりにたくさんのお客様にご利用頂いている。
 MicrosoftGoogleなどでよく言われているルール、[Eat your own dog food](自分で作ったものはまず自分で試してみる、の意)よろしく、当社で作ったソフトウェアを社内の業務に実装している。

 ところが、これがまた大きな声では言えないが、評判が悪い。社内にはソーシャルサイトがあり、社員がいろいろつぶやいたりするのだが、このソフトを使う時期になるたびに、「使いづらい」「レスポンスが遅い」などクレームが紛糾し、最後には「責任者出て来いっ(by 人生幸朗)」状態に陥ってしまう(苦笑)。
 
 それはちょうど、売れない中華料理屋のオヤジが、まずい料理を店で出し、それを家族にも食べさせているような状態とたとえることができる。
(まぁ、料理なら、また家族が作るなら、「慣れる」ということもあるだろうけど、慣れちゃったらそれはそれで一種の“ゆで蛙”状態なんだけど...)
 ちなみに、どんなにうまくても、[Dog food]ならば、そもそも人様の食べるものではないが...
 
 私は、この会社の別のグループ会社にいるが、正直、今はこの“まずい飯”を食わずに済んでいてほっとしている反面、何とかこのソフトウェアをきちんとできないものか、とも思う。もちろん、開発側とて何もしていない訳ではないだろうが、得てして改善は進まない。社内のクレームくらいだと言い訳がしやすいのか、そもそもユーザー意見を瞬時に捉えて改善できるほどの技量があれば、このような「まずい飯」ソフトを作らないのではないかと思っている。(自社のことで情けないけど)
 大企業といわれている組織風土は本当に厄介だ。
 
 で、ひとつ考えたのは、このソフトウェアの類似の且つ評判の高いソフトウェアで、クラウド(この場合はSaaS型)で提供している企業のソフトを利用することである。
 クラウド型は基本的には数ヶ月の縛りはあるものの、「利用」形態で即解約も可能というのがメリットである。
 ここに目をつけて、ちょっとの間「イケてる」ソフトを“お借り”して、そのエッセンスをベンチマークしちゃおう!という発想である。
 もちろん、今すでに「まずい飯(手弁当)」を導入している本部では業務がストップするリスクがあるためすぐに変更はできない。そこで、グループ会社である我々が敢えて「実験台」となり、このクラウドソフトを導入してみるのである。かくして同じ企業グループで一瞬は、「同一業務で複数ソフト」状態となるが、ここで分析チームを組織化して、優れたツールと自社の「まずい飯(手弁当)」ツールのベンチマークを行うことが可能にする作戦である。
(この「実験台」になることは、実は自社にもメリットが高い。うまくいけば、相当の期間の“利用料”は、開発費計上することも可能かもしれない。)
 
 先日、昔よく見ていた、みのもんたの「愛の貧乏脱出大作戦」(TV東京)http://bit.ly/boApvM という番組があった。
 駄目な料理店の店主が、心を改めてその道のプロに教えを乞い、そのまま暖簾わけしてもらうことで、自分の料理と店を刷新する、というストーリであった。
 
 上記のクラウドの利用は、ちょうど、自社の「まずい飯」を改め、クラウド企業に「暖簾わけ」(実際はリバースエンジニアリングに近いが:汗)をして頂くようなものである。
 ちなみに、この作戦は「プライベートクラウド」ではできない作戦であり、もしもパブリック・クラウド環境下でのSaaSソフトで大企業向けがなければ実行ができない場合もある。
 
 いずれにせよ、「情報システムを利用する」クラウドコンピューティング、というのは、こんな使い方もあるのではないかと思う。自社では早速、「クラウドみのもんた”作戦」と命名してみた...