POPEYE世代のマネジメント

 私の勤めている会社では、経営環境が非常に厳しい状態に陥り、損益等の主要な財務数字もマイナスという言葉をよく聞かれる様になっています。

 経営者は「危機的状況」と言うのですが、どうもマネジメント手法や戦略が大きく変革したりする様子はありません。社内の中では「変革」という言葉も自己都合で使われるケースが多くなっています。
 
 昨今の経済環境の中、長期的に見て、製造業は大きな変化に晒されています。そんなことはココで言わなくとも既に「耳タコ」でしょう。
 
 変化を要求されているのに、変化を起せない。
 
 この原因の一つに、私は管理者層の年代的な感覚、が関係しているように感じることがあります。
 
 
 今勤めている企業では、平均年齢が44歳で、役職者のほとんどは、40代後半〜50代前半の方が99%を占めています。所謂、バブル前期入社世代といえば良いかもしれません。
 丁度、受験戦争という言葉が厳しくなってきた世代で、学歴社会の幕開けでもありました。
「受験勉強してよい大学へ行き、良い会社に入る」ことが、正しいとされはじめた世代ではないでしょうか?
 
 そしてこの世代が丁度10代後半から20代前半の頃によく読まれていた雑誌が、「POPEYE」です。
 当時、この雑誌は一大ブームとなり、社会現象化したのを覚えています。
 内容は、男性向けのファッションや髪型からデートのコース設定、段取り方法、等、若者のハウツー本であり、この雑誌を見て、高価なホテルを予約したり、高級車に乗る若者も出現したりしました。
 
 ココには、当時の若者のステイタスな生活のハウツーが満載でした。
 
 この二つには、大きな共通点があると思っています。
 
 それは、
 
 「生きていく上で、常に、“正解”が存在していること。」
 
 受験勉強には、「正解」があります。「正解」がなければ、合否の判定はできません。その「正解」は、出題者の意図している部分であり、それ以外のモノの見方は、「不正解」です。
 
 そして、ライフスタイルも同様に、「ハウツー本」が出回ることで、皆がそのような生活に憧れ、それが一つの「正解」となりました。
 (車持ってないと、デートにもいけない。デートはフランス料理じゃないとおしゃれじゃない、等)
 
 そして今、「正解」のある環境で育った世代の多く(⇒もちろん、全員ではありません)が、今サラリーマンで中間管理職となり、一番責任のあるところで、「正解のない」世界に放り込まれてしまっているのです。
 
 
 ここに一つの仮説があります。
 
 この世代は丁度社会を意識する10代後半から20代にかけて、生き方を「ハウツー」で学んできました。だから、困った時には何か「ハウツー」に頼りやすい。そしてそれはマネジメントにおいても同様で、変化が激しく先が見えないこの状況において、何かしらの「ハウツー」を求める。それは時には「上司の指示」であったり、「MBA基礎コースで学ぶ戦略の定石」であったり。残念ながらそのどちらにも、変化を乗り越えていける自立性は存在しません。
 
 こういう上司の下で働く社員は、閉塞感を感じずには居られない。
 ボトムアップ提案は、彼らの様な上司達にとって「ハウツー」にはならず、グチや思いつきとしてしか理解されない可能性もあるかもしれません。そう感じることが、あまりにも多く社内には存在しています。
 
 ハウツーに頼ってきた世代が、大きな環境変化に身を置かれている。

 自社のこの層の管理職を見ていて、先の見えない変化は、やはり不安でありチャレンジ精神も不足しているように思えます。
 もちろん、そんな人ばかりではないのだけれど...

受験と「POPEYE」世代が、変革を抑制し、閉塞感の元になっている。
 
 根拠がないのですが、そう感じます。