戦略について

 まず、企業の戦略には、常々大別して二つあると思う。

 一つは、『競争戦略』。
 おそらく、戦略と聞いてイメージされるもの、戦争、兵法、ランチェスターファイブフォース、ポジショニング分析、等思いつくモノはここに分類される。
 『競争戦略』は、所謂“戦い”である。必ず自分と競争している「相手」がいる。しかも時間軸は今。
そしてそのKPI(評価指標)は、多くの場合「利益」又は「キャッシュフロー」である。(企業の場合はそれがほとんど)
 ある経営学者は、「サバイバル戦略」と呼んでいます。極端に言えば、
“今勝たなければ、明日はない”ということです。

 別の言い方をすれば、「(今)あるべき姿」ということが出来るでしょう。
 

 もう一つは、『成長戦略』。
 これは、上記と似ているようだが、登場人物と時間軸が異なる。
 成長すること、は言い換えればサスティナブル(持続可能)であることである。企業は存続することが第一義であるという考え方である。
 売上やキャッシュフローを右肩上がりにすることが目的ではなく、企業として時代に合わせて“成熟”すること、が成長戦略である。
(この“成熟”とは何か?ある意味そこが、経営哲学に繋がる最も重要な部分であろう。)
 したがって、そこでは「利益」は目的ではなく「手段」になり、主語は
「自企業」であり、時間軸は「未来」となる。
 先述の経営学者は、「前進戦略」と名づけている。

 別の言い方をすれば、「(未来に)ありたい姿」と言える。


 
 これは、どちらが正しいか?という議論ではないのかもしれない。

 ただ、「成長戦略」を描くことをしなければ、「競争で負けたときに、
ゲームオーバー」となってしまうということがいえる。


 声を大にして言いたいのは、

 『競争戦略』は、現在の組織のリーダーの地位にある人が考えて実践
すべき内容なのに対し、『成長戦略』は、次世代の人が考えるべき内容
だということである。

 私は常々「何のために社内の業務を削減するか?」という問いに対して、「空いた時間に“戦略”を考えよう」と言っている。
 これは今、業務を考えている世代こそ、『成長戦略』を議論しよう、という意味である。
 皮肉な結果かもしれないが、今の経営を担っている人は、「競争戦略」がどうしても主要なテーマになりがちになる。これはある意味では仕方のないことなのかもしれない。今のミッションを放置して未来を考えられては、経営の手綱を握るものとしては失格だからともいえる。
 
 
 また、戦略、その実行については、先般のフォロワーシップの類型(http://d.hatena.ne.jp/tuk08344/20100216/1266297932)で「競争戦略」は“軍人”が、「成長戦略」は、“ナレッジワーカー”が、それを担うことになると考える。

 ナレッジワーカーが増え、成長戦略を考えるようにならないと、今の
競争に負けたら「一巻の終わり」となってしまう。たとえ勝ったとしても、毎日血みどろの「レッドオーシャン」で戦うだけの企業に成り下がる。
 未来のない人間がいかに落胆するかを考えれば容易に分かるとおり、企業(組織)自体もまた、未来についてのコミットメントを求めるのである。

 
 戦略は、ヒエラルキーに関係なく、考え、議論されるべきと思う。
ヒエラルキーによってしか考えられない、動作しない「戦略」は、「競争
戦略」のみである。リーダークラス以外に戦略を考え、実行する人がいないのは、その企業が「成長戦略」をやっていない、ことと同義である。

 未来について議論しましょう。