返済猶予に見る、中小企業の行方

 16日付の朝刊に、「金融機関の返済猶予の拒否わずか〜大手行法施行の後」と記事があった。これまで「貸し渋り」から「貸し剥がし」と、中小企業に対する金融機関の対応がここへ来て大きく転換したと報じている。

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 金融円滑化法(「中小事業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」)は、’09年12月4日の施行で’11年3月までの時限立法。
 金融機関に対して、資金繰りに困った中小事業者や住宅ローン債務者から返済負担をかるくしてほしい要請があった場合に、貸し付け条件に応じる努力義務を課すものである。

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 昨年12月4日から年末までに、中小事業者より15,330件の申し込みがあり、3,088件について応じた。多くは半年程度元本返済部分を猶予する、と言う内容であるとのこと。
 
 円滑化法については、賛否両論あるだろうが、資金繰りが厳しい中小事業者やローンの債務者にとって、一時の救いになることは間違いない。
 そして今回はそれに対して大手の金融機関がきちんと拒否をせず応じているとある。(簡単に応じ過ぎるのではないかという意見もあるが。)
 短期的な視点では、政策が一つ効果を発揮していると考えられ評価できる。
 
 しかし、問題はその先である。
 
 奇しくも同じ新聞の書面の経済欄に、GDPの三四半期連続プラスも実感に乏しい、内需は低迷でデフレの影響がまだ色濃く残っている、と報じている。売上や資金調達の多くが内需型の企業である中小企業にとっての経済環境は依然厳しい。
 
 このような事態で、望まれる手としては、中小事業者の場合には、経営革新を促進するための仕組みである。
 中小事業者の場合、多くは一つもしくは関連する他の事業がある程度で、複数の事業を展開している企業は多くはない。そのような状況で、内需を拡大していくためには、新しい気づきを事業開発につなげる、イノベーションの創出が必要になる。

 国策として、「中小企業新事業活動促進法」を平成17年より実施し中小企業の経営革新を公的支援している。支援の内容としては、借り入れ保証の別枠化や低金利融資、設備投資減税、投資促進など様々であるが、多くは一定の条件をクリアした経営革新を行った企業に対する財務面での優遇措置である。
 
 しかし一番必要なのは、この長期化するデフレの中で、どのように経営革新をするべきか、その戦略性が問われる。
 
 国策としての中小事業者に対する金融・財政政策は実際かなりの優遇措置が存在する。しかしその前に大事なのは、経営革新を行う戦略であり、未来を切り開くアイディアに他ならない。

 経営コンサルタントや中小企業向け製品・サービスを扱う事業者などは、こうした観点で中小企業をバックアップすることが、ある種の社会貢献、経済貢献と言えるのではないかと考える。
 もしも、円滑化で返済猶予された中小企業のほとんどが戦略がないとしたら...銀行がまた大きな損失を被り、景気がいっそう深刻になる可能性も否めない。そうすれば日本経済の復活のシナリオが遠くなることにもなる。
 
 中小企業の経営革新をバックアップすることが、日本経済をバックアップすることと、同義になっていくのかもしれない...